夜逃げ

今日オーストラリア人の友人が店を訪れて今後の行方について色々と語ってくれた。殆どの店が廃業に追い込まれて続けている店がほんの僅かという現状で、「この場所でやっている意味など何も無い、もう商品をパックして逃げろ!」と過激な忠告を頂いた。現に回りにはそこに踏み切った店も無い訳では無い。


この友人は決して悪党では無くむしろ生真面目な性格の人間だ。もちろん自分のことを思って言ってくれた助言だった。しかし「自分はそれはしたくない」と言った。「もうお金が払えません。因って自分を訴えて下さい」というのが、最後の最後に残ったシナリオになると言った。結末としては最悪のシナリオだ。


友人:「これからどうする?」 自分:「高齢の父親が日本で待っている、だから直に帰るという選択肢もこの状況が続けば大きい」 友人:「今年中には海外からの旅行者は戻らない、状況が一変したらまたオーストラリアに戻って来ればいい」 自分:「もう、旅行者を相手にするのはいいかなぁ...」 友人:「日本で働き口があるのか?」 自分:「無いと思う、でも探してみる」とこんな会話が続いた。


この店を続けたい気持ちはいまだ強い、ただ友人も言っていたことだがケアンズはツーリズムの街でローカルを相手にする場所ではない。旅行者が来て初めてこうしたスモールビジネスは成り立つと。それはもう十分すぎるほど分かっていること。店の契約が終わるまで後7カ月、ここでもし店を放棄して逃げたら恥晒しの日本人と末代まで語られるだろう。それだけはどうしても出来ない。だから「ここにはローカルしかいないんだ」と今一度自分に言い聞かせた。