おお、神様...

ご婦人が帽子を試着するや否や「これはいくらするの?」と値段を尋ねるので、「こちらは$320ドルです」と答えると決まって「オーマイゴッド!」と出ましたとばかりにお馴染みの セリフを口にする。ヘレンカミンスキーというシドニーの有名なブランドの帽子だが、「トゥー・エクスぺンシィブ」じゃなくてこのフレーズで返されることが多い。


「別にこれオーストラリアのブランドじゃん、そんなに驚かなくてもいいでしょ」みたいな感じだが、実はオーストラリア人て意外とこのブランドを知らないので、「これは尋常な金額ではない」と 腰が引けてしまう人がけっこういるのだ。確かにただの麦わら帽子だと思ってこの値段を提示されたら知らない人はびっくりするだろう。


この「オーマイゴッド」というセリフは別にびっくりした時だけじゃなくて色んな感情の表現で使われれることも多い。前に夜遅くなっていつものように柴犬を連れて散歩に出かけると、どこからか妖艶なリズムで「オーマイゴッド」と繰り返す喜悦な 声の吐息が聞こえて来る。窓を開けっ放しで桃色の夜の営みに励んでいた。


その声に何故か柴犬が素早く反応して色事の窓辺に向かって吠えまくり、つられて自分も「ハチっ こらっ」と犬に向かって大声を出して叫んでしまった。エデンの園はその後一瞬でシーンと静まりかえり花園は禁断の果実に変わった。 今の自分の心境なら「おお 神よ このコロナから救いたまえ」と心から言いたい。