記憶に残る情景

赤信号で停止しているとその前にある踏切が鳴る。キュランダ鉄道が目の前の踏切を横切って行った。この列車はクラシックな客車が列なる14両編成で牽引された全長300メートルを優の越える観光鉄道で、33キロに至るキュランダとケアンズの間をゆっくりと1時間45分かけてその道のりを進んで行く高原列車だ。


今日は週末の土曜日、しかし14両ある客車には殆ど乗客がいなかった。普段なら各車両がいっぱいにお客さんで埋まる人気の列車だが、スクールホリデー明けということもあってか旅行者がいないのだろうか? 今はコロナの影響から満席で座ることは出来ないそうだが、これでは全く心配無用といった感じだ。


自分が思い浮かぶこのキュランダ鉄道はいつもたくさんの旅行客が、写真を取ったり歌を歌ったりと思い思いに列車の中で楽しむ光景が目に浮かぶが、こんな淋しいキュランダ鉄道は確かに知らない。いかにケアンズっていう所は観光が売りだったかということをあらためて知らされる瞬間だった。


1891年に開業したこの高原列車は、130年経った今も当時の雰囲気を殆ど変えずにケアンズとキュランダの間を走り続けている。途中1995年には大きな落石で線路が破損してピンチを迎えるが、再びそのピンチをチャンスに変えて今日まで多くの旅行者を楽しませてきた。もう一度あの車内に飛び交う旅行者の賑やかな笑顔を見てみたい。