道の選択

大学一年の時に東海道線の車内で見たチラシがニュージーランドの田舎の風景だったが、その風景がずっと心に残った。何の宣伝だったかは記憶にないが、その風景の写真がいつか海外に住んでみたいと思った多分最初のきっかけになったような気がする。山の麓に広がる田園のような感じのチラシだった。いつか日本を出てみたい、この時はまだただの願望に過ぎなかったけど。


自分は将来絶対に海外に住みたいと心に決めたのが、その後のハワイ・マウイ島での生活だった。当時ウインドサーフィンに没頭していた自分は大学の休みの期間を利用して、その聖地マウイ島に赴きウインドサーフィンをやるのが最高の楽しみだった。朝から夕方遅くまでウインドサーフィンだけに熱中していて本当にただそれだけだった。


春休みの学校が始まる直前までの約2カ月ぐらい毎年マウイ島で過ごしていたけど、80年代前半の頃のこと今のように情報が溢れている時代では無かったので、その時は見るもの見るものが全て新鮮に感じて例えばスーパーで売ってる3リットルの牛乳だけで外国を実感した。この先卒業したら絶対ハワイに住みたい...


周り回って今はケアンズにいる。あの時、電車の中で見たニュージーランドのチラシでの願望から40年以上が過ぎた。あの頃でもさすがにこの年まで海外にいることは想像していなかったけど、ずいぶんと月日は流れたもんだと我ながら思う。60歳を迎える時がこの仕事の集大成だと決めていた。あと少し道半ばにあって今はまだここに居たいという気持ちと、もう十分、祖国に帰ろうという気持ちが交錯してこの先あと僅かに残る道が選べない。