失せた物のこだわり

この20年の間に集めたアンティークのコレクションを売ることにした。殆どがオーストラリアの古いもので、ビールやソフトドリンク、ワインなどのボトルやお菓子や紅茶、コーヒーなどのティンの他、ビンテージのテディベアなど今までに集めた数は100点以上にのぼる。自分はこうしたアンティークを集めるのが大好きだった。


今ある店の商品では限界があるのでこうしたビンテージのアンティークならどうだろう?と思ってやってみることにした。数日前にケアンズに住むお客さんから「あなたの所にあるこのアンティークの商品ってネットに出したら絶対売れると思うけど」と言われて「こういうの探している人っ意外に多いのよ」とその言葉が心に残った。


化粧品で使っていなかった木の棚のスペースにこのアンティークを集めてみたら意外に雰囲気が出たので、これは良いかもと思って一日かけてディスプレイに集中しながら完成したアンティークのコーナーはなかなかの出来栄えに仕上がった。インターネットでひとつずつ検索しておおよその値段を他と比較しながら後は自分の気持ちの入っていたものには少し値段を多めに付けてみた。


ちょうどこの時に友人が店を訪れて「何で売るのよっ、取って置いたら」と反対された。自分がこういうものを好きなことをよく分かっている友人だった。自分でも「何故売ってしまうのか?」と自問自答したが、気持ちの中に以前のような物への「こだわり」がもう無くなってしまっている。あんなにあった物に対する情熱がコロナをきっかけに何だか泡のように消えてしまった。