二人で出席

慣例となっているアメリカ大統領が就任式の時に着るブランドにちなんで同じブルックスブラザーズのシャツにスラックス、これにネクタイも同じブランドで合わせて、手元にはルミノール・パネライの腕時計、足元はジョンロブのバローコテージのブーツと今日の天皇陛下の誕生日の祝宴のために身なりをそれらしく揃えてみた。


こんな格好をするのはおそらく20年ぶりぐらいだろうか。普段、店で仕事をしている時はT-シャツにジーパン、時計もG-SHOCKで靴はスニーカー、時として自分は蛍光ベストの作業着を身に着けて安全帽を被り、靴もダンロップの泥だらけの作業靴を履いている。これが最近の自分の恰好でだんだん板について来た。


久しぶりに下したブーツは念入りに靴クリームで整え、時計も久しぶりにねじを巻いて時間を合わせた。しわが入ったシャツもかみさんが今朝アイロンできれいに伸ばしてくれた。自分でやると言ったが「あんたがやったら隣にいる私が恥ずかしい」と自分がやることはいつも信用していない。


文句ばっかり言っていたかみさんだが結局今日の祝宴に出席した。たぶん本音は出たかったのだろう。朝から「どっちのほうがいい?」と黒のワンピースとグリーンのドレスを持ち出して自分に尋ねてきたが、自分が「う~ん」と黙ってしまったので「聞く人を間違えた」と言って部屋を出てしまった。でも履いていくパンプスの色の落ちたところを黒マジックで塗りつぶしていたのを自分はしっかり見た。


この場に来ていた着物姿の女性は意外と少なく、天皇陛下の為の式典にしてはスピーチした人すべてがケアンズと日本の歴史の関係を話すに留まり、特にかしこまらないざっくばらんな祝宴だった気がする。かみさんもこの席でけっこうな量のワインを嗜んで、最後は隣のカジノの中にあるただで飲めるコーヒーをすすって上機嫌だった。