あの時の思い

東日本大震災からもうすぐ10年が経つ。今年はその節目の年、完全な復興にはまだ時間がかかると思うが、時を重ねながら震災で受けた傷跡から少しずつ前に歩き出して来た。とは言え大切な家族や友人、故郷の家を失った人の気持ちは簡単には癒えない。悲しみに暮れ続けた震災からの復興を未来に繋げるために明日への希望を常に持ち続けたい。


10年前のあの日、自分たちも大津波警報が出されている東北地方の状況をインターネットを見ながらじっと見守っていた。夜になってニュースの映像から津波の被害は想像を絶する大きさになっていたのを憶えている。倒壊した家々などあらゆる産物を津波が飲み込み、炎に包まれながら海に流れ出て行く様子は地獄絵図のようだった。


そして自分たちは今、コロナウイルスという新たな見えない敵に対してその挑戦を受けている。震災の傷を負った人たちにとってはさらなる苦難が立ちふさがった。しかしあの時の経験を思えばきっと乗り越えられるに違いないと思っているはず。母の生まれ育った福島の人たちは、自分も知っている通り震災の苦難を逆に力の源にして頑張っていた。


あれから10年、日本に帰ったらもう一度東北の地を訪れたい。出来れば3月のこの頃に赴きたいと思っている。少しでも同じ季節の空気に触れてみたいから。今は自分たちにとっても大変な時、でも震災を乗り越えて来た人たちを思えばここで弱音を吐いていられない。節目の3月11日は被災者にとってどんな思いを胸に秘めて迎えるのだろうか?