ふたつ返事で

息子がかみさんに「来月、大学の卒業式があるんだよね」とポツリと言ったそうだ。本人は「金がかかるからこの卒業式には出ない」と言ったらしいがかみさんは出た方が良いと言っている。息子はシドニーの大学に行ってるが、今はコロナの影響でオンラインの授業に切り替わっていて、9月いっぱい迄ケアンズの自宅にいる予定になっている。


親に金が無いことが分かっているのでそんなことを言っていると思うが、本人は卒業式に出たいのがあからさまに分かる。かみさんも息子といっしょにシドニーに行っていいっ?と自分に尋ねてきたが、もちろん「ダメだ」とは言えない。卒業式に親がいなかったら寂しいだろうし、実際かみさんもこの卒業式は楽しみにしている。


コロナで親が出席できないならともかく、金が無いから出れないなんて洒落にもならない。しかし、ふたつ返事で「行ってこい」と言えないのが今の自分の悲しいところ。かみさんには「何とか行けるようにしよう」と言ったものの、店の収入が十分に無い中これにかかる費用を簡単に用立てることが容易ではないのも事実だ。ただ、物は考えようで前向きに捉えることにした。


今、息子は自宅にいるので本来かかるシドニーでの生活費はまるまる浮いている、そのことを考えれば浮金だと思ってこれに充てればいいかと深く考えないことにした。当の本人はまだ決めかねているようだが、人生の節目にあたる卒業式、これを逃したら生涯後悔するに違いない。かみさんには「行ってこいよ!」と気持ち良く伝えることにした。