才能

朝、いつもより早起きをしてプールに向かう、早朝の時間だがすっきりと青空が広がり気持ちの良い朝になった。この時間はいつも元気な初老のディビットがプールで歩行を繰り返しながら体を鍛えている。今日も早速、「オハヨウゴザイマス!」と声がした。サングラスをしたディビットがプールから手を振っている。


開口一番「オオサカ ノー グッド」と昨日の大阪の感染者が過去最も多かったニュースを引き合いに出して今の日本の現状を嘆いていた。「オオサカ ピープル ゼンゼン キニシナイ」、ディビットは大阪人の気質を良く知っていて、あまり細かいことにこだわらない人たちで人情味は溢れているけど笑いで気にしないタイプの人が多いと笑って答えていた。


プールでひと泳ぎした後、マスクを作ってくれている人のところに出向いた。ケアンズの市街から車で20分ほどフリーウェイを北に上がったスミスフィールドという世界遺産の山の麓に位置するところで彼女の家はその緑に囲まれた住宅街の一画にある。旦那さんのお母さんが考えたというこだわりを持ったおしゃれな家だ。


早朝にもかかわらず彼女は玄関先に既に待っていて、いつものように今回作ったマスクの生地や作る工程を丁寧に説明してくれた。殆ど彼女は一日中この家の中で自分の作品であるバックや帽子を作っているということで、このような絶景の広がる空間を独り占めしながら好きな仕事に打ち込めるなんて「やっぱり才能って凄い」と何の才能も持ち合わせていない自分をただ嘆いた。