静かな夜

ひとつ挟んだ隣のお土産屋さんはとうとう夜の9時まで営業することになった。この界隈は夜6時以降は殆ど人通りが無くなるが、それでも店を開けて少しでも売り上げを作れるよう頑張るらしい。ただ、歩く人も殆どいないので夜は怖いとも言っていた。確かにウーバーイーツのデリバリーをしていた時に店をチラッと見たが誰もお客さんは入っていなかった。


本来なら6時以降、この辺りの通りは夕食前後の旅行者が歩き回る一番活気がある時間帯にあたり、中でも8時ぐらいが一番忙しい。コロナ前はどのお土産屋も9時、10時までは当たり前に営業していた。今は少しでも多くのお客さんを拾いたいというお隣のお店の気持ちに偽りは無い。従業員を多く抱えることで必死な思いが自分にもよく伝わってくる。


代わってナイトマーケットは今、旅行者でごった返している。夜遅くまでやっているところがここしかないというのもあるが、エスプラネードも含めて今一番活気があるのがこの場所かもしれない。中で日本人の経営するお土産屋さんのオーナーも最近はお客さんが多くて忙しいと言っていた。やっぱり人はごちゃごちゃした明るい所に惹きつけられていくものだ。


自分たちの通りはあまりにも暗すぎるし店も無いので、観光客はまず歩かない。ちょっとしか離れていないのにこんなに明暗を分けるなんて商売って本当に難しい。かつて夜に一番栄えたこのアボット通りとスペンス通りの交差点も、今はコウモリの鳴き声だけが耳に付くバットな場所に変わってしまった。