初めての友人

日も沈みかける頃になると掃除の仕事に出動する、向かう先は運送屋 だ。自分が仕事をする頃には殆どの従業員は帰宅の途に着いている。ドライバーは早朝の4時ごろから仕事を開始するらしい。広い敷地の中にある建物の中には、たいがい自分一人しかいない。でも辺りが真っ暗になった頃、一人のトラックドライバーが戻って来る。


いかつい男たちが多いこの世界は、皆殆どが寡黙で自分に対しても特に友好的な感じでは無いが、その中にひとり親しみやすいドライバーがいる。彼の名はジッャク、1961年生まれで自分よりひとつ上のこのおじさんは、いつもコカ・コーラの真っ赤なトラックを北に南に縦横無人に走らせる優しい長距離ドライバーだ。


昨日は北に400キロ上がったケープトリビュレーションまで車を走らせたそうだ。「俺はこの長距離を走る仕事が気に入っている、町中で働くより楽しいし生に合っているんだ」と目を輝かせて語っていた。ジッャクは長距離が多いのでいつも帰って来るのが一番最後なのだ。自分を見つけると決まって手を合わせてお辞宜をするのが彼の挨拶になっている。


昨日も戻るや否や自分の名前を呼んで「今日はビックデーだった」と長旅の疲れも見せずに早速、自分に笑顔を返してくれた。既にふたりのお孫さんを持つこの親日家に日本語をその都度教えるのが今の自分の日課になっている。今は「マタ アシタ ネ」がいつもの決まり文句になっていて、自分がこの運送屋の仕事を通じて作った初めての友人だ。