短い旅

今週の水曜日から3日間、かみさんと息子はシドニーに赴く予定になっている。短い期間での滞在だが息子の卒業式に出席するためだ。3年間に渡った大学での授業を終えて、今は次のステップである2年間の大学院に進んでいる。これを終了すると晴れて建築の仕事に就けることになるがまだその道程は長い。


現在、オンラインでケアンズの自宅にいながら授業を受けている息子は、自分たちの厳しい経済状況を考えて今回の大学の卒業式に出るかどうか最後まで迷っていた。しかし、最終的にこの卒業式に出席することを強く後押ししたのがかみさんだった。3日後に迫った卒業式に向けて息子は初めて着るグレー色のスーツを新調した。


鏡に映るスーツ姿の自分を何度も見ながら、時よりにやけてネクタイの結び目やズボンの裾の長さを最後まで入念にチェックしていた。スーツを着ることが余ほど嬉しかったのだろう、かみさんにボタンは外した方が良いのか付けたままが良いのかなどつまらない質問を繰り返してかみさんを怒らせていた。


息子は忙しい勉強の合間を縫ってかみさんも働いている同じラーメン屋さんで夜バイトをしながら、この卒業式のために滞在にかかる費用を自ら準備して来た。親として何もしてやれなかったが、息子にはこの卒業式で記憶に残る素晴らしい思い出をたくさん作って欲しいと心から思う。