思いの詰まった絵本

先日、絵本作家で「はらぺこあおむし」の著者エリック・カールさんが亡くなった。カラフルな色彩と優しい語りで描かれた絵本は、小さいお子さんのみならず大人をも魅了する世界中の人々に今も愛され続けているベストセラーだ。自分はこの「はらぺこあおむし」の絵本に特別な思いがある。


今から19年前の2002年7月にひとりの友人を失った。彼女の名前は「ひとちゃん」、高校の時の同級生で自分が日本に帰国した時にいつも必ず会っていた親友だ。彼女は当時、自分が何でも気軽に話すことが出来た友人のひとりで色んなことを彼女と話した。だから日本に帰国した際にはまず最初に彼女に連絡を取り、そして再会するのが楽しみだった。


グアムから帰国した際に会った時ひとちゃんから結婚することなったと報告を受けた。祝福を送る一方でもう彼女とは会えないなという複雑な思いも廻ったのを憶えている。最期に会ったのは2002年の2月 、ケアンズに帰る当日に藤沢駅の構内で約束もしていないのにひとちゃんが待っていた。


見送りの感謝を彼女に伝えて短い言葉を交わした後にひとちゃんがプレゼントしてくれたものが、当時2歳になった息子に向けての「はらぺこあおむし」の絵本だった。それは保母さんだった彼女ならではの贈り物だったと思う。それから5カ月後の夏、共通の友人からのメールで彼女が病気で天国に召されていったことを知った。


今も「はらぺこあおむし」の絵本は宝物として大切に本棚の中に保管してある。久しぶりにこの絵本を開いてみたら何だかひとちゃんに会いたくなった。彼女が亡くなってから来年の7月でちょうど20年になる。日本に帰国出来たら彼女の墓前で「全くコロナのおかげで大変だったよ」と思いっきり愚痴を溢したい。