もう、振り返らない

コロナ前には旅行会社などの観光業で働いていたケアンズの日本人も今は観光から離れて、地元に溶け込んだ職種に就き出している。もう例えこの先、国境が再開して日本人旅行者が戻って来ても前の職場には戻らないという人もいる。これからは安定した生活を望みたい思っている人も少なからず多い。


特に旅行代理店のような日本人旅行者を主に取り扱っていた企業で働いていた人たちは、このコロナで生活が一変してしまった。ツアーオペレータ―やドライバーガイドとして働いていた人たちは、その多くが職を失い否が応でも転職せざるを得なくなった。そして新たに何か資格を取って新天地に挑戦する人が自分の回りにも数多くいる。


新たに介護の資格を取得して日々、新しい生活環境に馴染み始めた人が最近、店を訪れて近況を語ってくれた。その中で彼女が一番変わったこととして挙げてくれたのが見識の広がりだという。今まで経験したことの無いような日常を新しい仕事に就いたことで味わえることが出来たと屈託なく語ってくれた。


時として暴力的な言葉を受けたりコミュニケーションが取れなかったりと泣きたくなることもあるそうだ。そんな心が折れそうになる時でも今までにない充実感がその仕事を支えてくれると言っていた。「アボリジニ―の友達が出来た。これって以前ならないよね」と笑って話す彼女は不思議なパワーを得たようにきらきらと輝いていた。