ワクチンは人間だけでは無い

オーストラリアではワクチン接種を必要としているのは何も人間に限ったことでは無い。実は今、コアラの間でもワクチン接種が進められている。と言ってもコアラがコロナウイルスに感染したのではなく、この予防接種は性感染症のクラミジアに対するワクチン接種だ。このクラミジアは人間にもかかる性感染症だが今、コアラの間で広く蔓延している。


今回の調査によるとオーストラリアでは地域によっては半数以上のコアラがこのクラミジアに感染しているという結果が報告されている。そこで今回対象となる400頭の野生のコアラに対してクラミジアのワクチン予防接種が行られることになった。近年の医療進歩により多くの場合、抗生物質での治療が可能になったが、今回ワクチンを打つことでコアラの生存率と繁殖率の更なる向上に期待が高まっている。


コアラのクラミジア感染拡大の要因に挙げらているのが環境の変化でのストレスだ。森林伐採や山火事などの自然災害によりコアラの生活範囲が狭まったことで、密集化による近親交配で性感染が広がった事や縄張り争いによるストレスから生じた可能性も指摘されている。もともとコアラはストレスに弱いと言われている動物だ。


クラミジア感染が進むと不妊症や目の病気にかかるケースが多く、お尻が湿った症状が現われ出すと殆どの場合、クラミジア感染症にかかった可能性が高い。 その昔から人間によって翻弄され続けて来たコアラたちも今、我々人類といっしょの道を歩み出している。大切なのはワクチン接種ではなくコアラたちの憩いの場所を守ることだ。