記憶のアルバム

夜、運送屋の掃除の仕事が終わって広い外の敷地に出たら煉瓦色の月が見えた。すでに外側が細い三日月になっていてこれから明るい満月に姿を変える。時刻は午後7時半を回ったところ、昨晩は亡くなった母親の誕生日で、その日がちょうど皆既月食だったのを思い出した。そこで暫らくその煉瓦色の月をぼっーと見ていた。


帰り際の車からもこの皆既月食をチラチラ眺めながら家路に向かった。家に着くとかみさんと助っ人でいっしょにウーバーのデリバリーを手伝っている息子はまだ家に帰ってなかった。再び夜空を見上げるとその時すでに月はもう半分近く明るくなっていて、すぐさま飼い犬のハチを連れて散歩に出かけることにした。


いつもの散歩道を通り森の中を抜けると、高い木々の上に浮かぶ絶景の月を拝める場所がある。この場所に差し掛かった時、月はすでに殆ど新鮮な満月に戻っていた。真っ暗な闇にぽっかり浮かぶ満月を見上げながら、そこで暫し立ち止まり「ハチ、どうだっ きれいだろ」と囁くと横でこいつはうんこをしていた。


この先、もうケアンズで皆既月食を再び見ることは無いだろうか。予定では部分的な皆既月食が来年の11月8日に見られるそうだが。。。昨日の煉瓦色の月は幻想的だった。この月をもう一度見ることはもう無い。ケアンズの思い出のスナップがまた1枚、記憶の中のアルバムに加わった。