日本人以上のオーストラリア人

3カ月ぐらい前だっただろうか、若い夫婦のお客さんが来店して以来、それからこのカップルは店の常連さんになった。ふたりはメルボルンからケアンズにやって来た。旦那さんの名前はゴルコフ、ロシアにルーツを持ちオーストラリアで生まれ育った。奥さんの名はアイリーン、ティモールから家族で幼いころにオーストラリアに移住したらしい。


この二人が出会った場所は日本の長野県白馬村、ゴルコフがスキー靴のチューンアップの仕事をしていてその時アイリーンと出会った。そして二人は結婚して今はケアンズに住んでいる。この二人、大の日本好きでアイリーンは片言の日本語を話す。そしてゴルコフは自分たち日本人以上に日本のことを知っているかもしれない。申し訳ないのは自分たちと話したいがために店に来ては何か見つけて買ってくれること。とにかく自分たちと日本について話したいのだ。


彼らが住んでいた白馬は山々に囲まれた場所、古くから山に伝わる信仰が多い。彼はその山岳信仰である修験道のことを話してくれたので自分もびっくり! 自分も最初は何のことか理解出来なかったが山伏のことを話してくれて修験道を知った。しかし日本人でもよく分からないと思うことだけど、彼は詳しく自分に熱心に語ってくれた。


白馬村の古着屋で買ったという古い絣(かすり)の生地で作った掛け軸をプレゼントで 頂いた。その掛け軸には漢字も使って「日本の富士山,日本のオサム、サーフィンカンガルー」と書いてあった。これはどうやら俳句らしい。5.7.5の句と言ったので分かった。そして丸ぶち眼鏡の人だと明治の俳人、種田山頭火を引き合いに出してこの人物について語ってくれた。最初は高村光太郎のことだと思ったがそれは種田山頭火のことだった。しかし、自分もまったく知らなかったこんな人物をどうして知っているのだろう?と驚くばかりだった。


他にも松尾芭蕉の「奥の細道」では、東北を旅しながら句を書いたこと、日本の洋服やブランドでは例えばスカジャンは横須賀発祥のジャンパーだったり、岡山の倉敷はジーンズ作りが盛んで「桃太郎ジーンズ」が有名なことだったり。他にも色んなことを話題と共に熱く語ってくれる。自分が説明することにもじっと耳を傾けていた。ゴルコフは日本語が出来たらと盛んに言う。でも自分には二人は日本人以上に日本の心を持った人たちだと思っている。こんなに日本のことを思ってくれて本当に嬉しい。