この人の名は「ツバメ」

ティムタムでお馴染みのオーストラリアン・ビスケット会社「ARNOTT'S」、カラフルなオウムのデザインがトレードマークになっている。このアーノッツビスケット、前進はオーストラリアで初めてベーキングビスケットを作った老舗「SWALLOW & ARIELL'S」というお菓子メーカーに由来する。


このお菓子メーカーを作った人の名はトーマス・スワロー、1854年にメルボルンの港町サンドリッチという場所で産声をあげた。5年後の1859年に当時のパートナーだったトーマス・エリエルを迎え入れてお菓子会社「SWALLOW & ARIELL'S」は誕生する。後に世界で5本の指に入る屈指のお菓子メーカーに成長するまでに至った。


時は1848年、ゴールドラッシュさながらのカリフォルニアで金脈を目指して一髪千鈞を目当てに多くの労働者がイギリスからアメリカに渡った。当時の船内の食事は乏しく特に慣用食のビスケットは酷いものだった。そこに目を付けたトーマスはベーキングしたビスケットを考案してこれが大当たり、瞬く間にSWALLOW & ARIELL'Sの名は世に広まっていった。


メルボルンに拠点を置いたトーマスはこの後も会社の拡大を続けて行き、クィーンズランド州ではサトウキビのプランテーションなどを手掛けて行く。しかしその後、アメリカの大手お菓子メーカーのナビスコに買収されそうになる中、オーストラリアのお菓子会社3社が統合してそれを守り抜き、それが今のアーノッツの原型になっていった。


晩年をここケアンズで過ごしたトーマス・スワローは1890年にその人生の幕を静かに閉じる。その後は息子のフレデリック・トーマスが継ぎ、1991年までポート・メルボルンでビスケットを作り続けた。今は無くなってしまったSWALLOW & ARIEE'S、その足後をARNOTT'Sが今も確かに受け継いでいる。