犬小屋と旅立ちの日

今日、午前中にVET(動物病院)に行って亡くなった飼い犬のハチと対面をして最後のお別れを告げた。家族みんなで冷たく凍ったハチの顔を擦ってあげた後に首元や体も擦ってあげると、かみさんはもう耐えきれずに嗚咽した声で大粒の涙を流しながら「ごめんね、ハチ、ごめんね、ひとりにさせて」と最後に看取れなかった自分を責め続けていた。


安置された部屋の中で暫らくハチと会話を交わした後、ひとりずつゆっくりとハチの顔を撫でてあげると最後にかみさんが先日、日本で買って来た赤い首輪とリードをハチの首もとに置いて毛布でそっと顔をふせた。これが自分たちのハチを見る最期の雄姿になった。ハチはこの後、灰になって我々の元に帰ってくることになっている。


受け取った パンフレットから自分たちがハチを思い浮かべて選んだURN(骨壺)はナチュラル色の四角い箱型に決まった。ハチの手形を模った額には名前とハチの生きた年月が自分たちのメッセージと共に刻まれる。遺灰の入ったURNはこの後2週間後に家に戻る。そしてようやくハチは天国に旅立ち安らかな時間を過ごすに違いない。


かみさんが「天国でいっぱい友達を作ってね」と言葉を残してVETを後にした。夕方、ハチが使っていた犬小屋を処理場に処分しに行ってハチの使っていたものは殆ど無くなった。ハチがいつも遊んでいたタイヤのおもちゃやエサ撥は形見に残しておくことにした。ただ犬小屋はハチが迷って天国に行けないと困るので処分することにした。そしてもう一つはこれを見ていつまでも泣いてしまうから。 犬小屋を運んだ後も車の中にハチの匂いがまだ残っていた。