「お帰り、ハチ」

昨日の夜、 飼い犬のハチが灰になって帰って来た。骨壺が入ったハチの栗毛色と同じ色の小さな木箱には、家族で選んだ庭で撮った若き日のハチの写真が貼られていた。写真の下に付いたプレートには「HACHI」と刻印がされて、その過ごした年月がいっしょに刻まれている。ハチがようやく家に戻って来た。


「お帰り、ハチ、こんな小さくなっちゃったな」。小さい遺灰の入った木箱は思ったより重たかった。それと「いつもいっしょだよ」と書かれた自分たちのメッセージを添えた、金色で形どられたハチの手形の額縁もいっしょに入って来た。そしてこの額にもその過ごした年月が同じように添えられている。


早速、母親の写真が飾ってあるサイドボードの横にこの骨壺を置いたけど、かみさんが「お母さんの横じゃ、お母さんに失礼じゃない?」と言ったけど、ここしかしっくりと来る場所が他にないのでここに置くことにした。湯呑が1つしかないので「ハチも母親といっしょにこれで飲むの?」とさすがに母親に悪いと思ってハチには別におやつをあげることにした。


「ハチはまだここにいるのかな?」「もう、灰になったからきっと天国に行ったんじゃない」「そうだな、行ったな、ハチは」「いなくなっちゃったね、とうとう、ハチ。。。」
「ハチに逢いたい。。。」木箱を持ったままかみさんは涙が止まらなかった。天国に行ってしまったけどハチは自分たちの心の中にずっといる。