抜け殻

売れ上げが欲しさに自分が大切にしていた物を売ってしまった。売ったのはダイハツ「ミゼット」のオート三輪のミニカー。昔、大阪ブリキ玩具というところが作った30センチぐらいのブリキで出来たミニカーで未使用のまま保管していたものだが、店のショーケースに置くものが無くなって来て、それでディスプレイとして飾っていた。


今から55年前、自分が幼稚園に通っていた当時、隣の家が材木店でそこのせがれと自分がたまたま同い年で同じ幼稚園に通っていた。その時、材木屋の旦那さんが使っていた車がこの三輪のミゼットでいつもこの車でそこのせがれといっしょにに通園、そんな訳でこのミゼットに愛着があった。


その大阪ブリキ玩具は今は無くこのミゼットはもう手に入らない。そんな愛着のあるものを今回手放してしまった。一昨日、日本のお客さんが来店した際に「このミゼット懐かしいね~、これ売り物?」と言ったので咄嗟に「売り物です」と言って売ってしまった。買った方は自分より10歳ぐらい上の人だったけど。


「これは出会いだから」と言って気持ち良く買ってくれた。でも、売った後になって「何で売ってしまったんだろう」と後悔、魂が抜けていったような感じになって、何かすべてがどうでもよくなってしまった。かみさんも「何で売ったの?」と自分に問いただした。目先のお金欲しさに大切にしていた物を無くしてしまった。自分は魂を売って抜け殻になったような感じがした。