隣との差

朝、店に向かって歩いている途中でワーフのクルーズ船ターミナルに停泊している豪華客船から次々とお客さんがタラップから降りてくる。クルーズ船は「クイーン・エリザベス号」、乗船しているお客さんはリッチかもしれない。急いで店を開けなくちゃと汗だらだらになりながら一目散に店へ向かった。


アボットストリートのコーナーにあるうちの隣りのお土産屋さんの前を通りかかるとクルーズ船のお客さんと思われる人で店内がごった返していた。「これはヤバい!早くお店を開けなくちゃ」と走って店に行き、すぐさまドアを開けて店内のスイッチを付けてお客さんが来るのを待った。


今日は朝早くからプラントを取りにナーサリーに行っていた関係で、10時の開店が7分ほど過ぎてしまった。それでも急いて開店の準備をして「よし! さぁ、いらっしゃい、みなさん」と万全の体制でお客さんを待ち受けたが、その後、誰一人とうちの店に入って来る人はいなかった。


「先ほどの隣の店のあの光景は何だったんだろうか?」と気落ちしたが、所詮、隣の店とは規模が違う。元芸能人の店と比較しても仕方ない。しかし、うちの店があるこの通りはあちらと天と地の差があるように人が来ない。気を取り直して入荷したプラントをすべてきれいにディスプレイして店に飾った。


その後、時間が経って忘れた頃にクルーズ船の女性がひとり入って来て、「このプラント、すごくきれい!写真撮ってもいい?」と聞いたので「もちろん、どうぞ」と答えた。そして、そのお客さんは嬉しいことにハンドクリームを1つ買ってくれた。これが今のうちの店の紛れもない現実。