スモーコ

オーストアラリアでは労働者に共通する「スモーコ」と呼ばれる独特の言い回しがあって、この言葉の持つ意味はいささか興味深い。初めて耳にする人はたぶん何のことだか意味が分からないと思うがこれは「短い休憩」と言うこちらのスラング。元はイギリス商船から発祥された言葉で船員に起因するスラングが、後にオーストラリアやニュージーランドに伝わり広く使われるようになった言い回しらしい。


スモーコの合図はその現場に携わるボスが決めるが、昼食の休憩前、朝の10時ぐらいに15分ぐらいのブレークタイムが設けられるのが一般的。スモーコから想像するとタバコの休憩時間のように思うけど殆どの場合コーヒーや紅茶などのお茶の時間に当たる。この仕来たりは主にケアンズのような田舎の農業に従事する人や同じく製造業に携わる人たちに浸透していることが多い。


スモーコで取る休憩にはお昼休みと違って賃金がちゃんと支払われる。もし残業の時には夕方にもう一度スモーコの休憩があるのが普通で、それほど高くない賃金で働く労働者にとっては短い憩いのひと時に。自分もマンゴーピッキングで働く時に取るスモーコの休憩時間は、初めて経験する何かホッとする束の間を感じる時間になっている。


このスモーコの権利について最近はお茶の時間で定着しているが、喫煙者にとっては極上の「一服の時間」、ただ喫煙に対して冷たいご時世の今は禁煙者からは厳しい目が向けられることが多い。農村部にはあまり無いと思うが都市部ではスモーコの時間にこの喫煙の権利を強調する人が多いらしい。自己主張の強いお国柄はこんなところにも及んでいる。