受け継がれる純血の命脈

柴犬と散歩していると「この犬はディンゴ?」とよく尋ねられるが、「違うよ。この犬は日本の柴犬だよ。」とその答えをいつも繰り返す。オーストラリアには柴犬と似た犬種が無いのでディンゴと間違える人が多い。尾っぽをあれだけきれいに丸める犬が少ないのもあるのかもしれない。ディンゴはそういう意味でもオーストラリアの固有種の犬? 


それが犬と完全に分類することは出来ないらしい。オーストラリアの動物学者の間では今もこのディンゴについてその分類についての見解が別れている。それは家犬かはたまたオオカミか? もともとディンゴはアボリジニーに飼い慣らされた後に野生化してタスマニアを除くオーストラリア全土に広がった動物だ。


最近の研究者の論文からディンゴは犬では無いと結論付けられた。では果たしてディンゴは何に属するのか? 現在はタイリクオオカミの亜種または独立種として分類された。1000年以上に渡り隔絶された環境に適合して、以来家畜にされた痕跡も無いとこからディンゴは犬の仲間ではなく独自の種という見解に至ったらしい。


そのディンゴだが飼い犬との異種交配が出来ることから交雑種(ハイブリッド)が広がり、純血のディンゴはクィーンズランド州のフレーザー島に僅か30匹しか生息していない絶滅危惧種に指定されている。すでに絶滅した日本オオカミとは大陸を越えた同じ仲間、フレーザーにしかいなくなった純血を守るディンゴをタスマニアン・タイガーの二の舞には絶対にしてはいけない。